Menace and Prayer

Artist

Throne of Chaos

Album

Menace and Prayer

Throne of Chaos

Track List :
1. From Clarity to Insanity
2. The Scaffold Scenario
3. Cold Bits of Fire
4. Bloodstained Prophecy
5. Menace and Prayer
6. Synthetia
7. Opus Void
8. Divinity

総評

Average Score
神盤
(1件のレビュー)
はいはい来ましたよ授業の時間ですよ席について下さい。

現在は新たな世界へとその音楽性を進め、既に「ここ」にはいない彼らが2000年に産み落としていったこの1stアルバム「Menace and prayer」は、キラキラとしたベル系Keyが印象的なメロディックデスメタルで、Children of bodom的なリズムにIn flames風のメロディを乗せた、といったの作風が故か、世間様では「チルボドのパクリ」で完結されてしまっておりますが、残念ながら私の感性はそれだけには留まりませんでした。

In flamesからの借用らしきフレーズは幾つか見当たりますが、それもごく一部。眩しいほどのKeyが前面に出ていながらも、主役はあくまでギターであり、あくまでリフであることが、Children of bodomとの差異として挙げられます。その為、2ndまでのChildren of bodomほどネオクラシカル風味は強くなく、ソロらしき物も殆どありません。所々でGtやKeyが単独で旋律を弾きますが、インプロヴァイズ的な物ではなく、しっかりと作りこまれた、極めてメロディアスなもので、特に6曲目:「Synthetia」中盤のソロなどは、沈む夕日を背に砂浜を競歩で前進したくなるようなメロディをたった一本のギター、短音の旋律で表現しており、圧巻です。というか涙のダム。

そして、密度の高い、練りこまれた各楽器。無闇なオーバータブを繰り返すことなく、左右2本のギターだけでハモリ、ユニゾン、リズム&リードと、シーン毎に楽曲を構成するための要素を埋め尽くしていく様は、まるでバッハのインヴェンションの如く計会されており、この折り重なりを聞いているだけで食パン65536枚はイケます。但し8枚切り。6枚切りでいうと49152枚。

そのギターがレギュラーチューニングである事による低音不足を解消する為に大きめのボリュームに設定されたベースは、心地よい低音を聴く者の腹に響かせながら、その名の通り「土台」として敷かれ、さらに時折唸るように前面に舞い出ては2本のギターとの絡みを見せます。

全く乱れる事のない安定したリズムを維持しながら、これでもかと言う程の手数を叩き込んでくるTeemu Laitinenのドラミングは、ブレイクの時などはもちろん、複雑なフィルの間でも他の楽器のフレーズなどを意識し、溶け合い、バンド全体の一体感をより増させております。

このバンドの音としての印象をより特徴的にするKey。ベル系数種、ストリングス系、リード系、アンビエント系と、多彩ながらもギターを食わない程度に装飾に徹しますが、全楽器の中で最も印象的なのがKeyなのは、そのフレージングセンスの良さに起因するのでしょう。

力は弱いものの、音符の縦の並びが気持ちよく、インストゥルメンタルの装飾として素晴らしい役目を果たすデスVo。

それらの楽器が、絶妙なバランスのミックスのもとに一糸乱れぬ、整合感溢れる演奏を聴かせると言った点で、「音」として聴くだけでも心地よく、その計算された曲の展開は聴く者を飽きさせることなく、また随所に散りばめられたブレイクは聴く者の拳を振り上げさせるでしょう。

これほど濃密で複雑な音たちを、プログレッシブになることなく、実に分かりやすく纏め上げ、極上のメロディで、実に聞きやすく表現する。それほどの実力を持っている彼らは、このアルバムで彼らがこのジャンルに思う全てを注いだのでしょう。そう、彼らはもう、「ここ」にはいないのです。
~教頭先生 fromキラキラ☆メロデス学園~
Best tune : Cold Bits of Fire
やはり密度でいえばこの曲。胸を打つメロディは強烈にその場面を印象付け、逆に複雑な展開は曲全体を適度にぼかし、飽きのこない一曲となっています。後半の、ブラストビートで溜まったものがブレイクを経てサビへと繋がり一挙に開放される、という流れの中に誰もが「脅威」と「祈り」を見出せることでしょう。

Posted by kazuki